星野リゾートは、地域に元々あるモノやコトを素材にして、宿の魅力を創り続けています。お客様にその地をわざわざ訪れていただくための価値を感じていただくためには、そうすることが効果的であるからです。今回、東京にホテルをつくるというお話をいただいた時、私の発想は混乱してしまいました。「東京では訪れる価値を自分がつくる必要なんかない」と感じたからです。
しばらく悩んでいましたが、ある日発想の角度を変えることができました。お客様に何を提供したいかを忘れ、東京に何が必要かを思ってみた時、初めて日本旅館という発想にたどり着いたのです。もともとあったモノがなくなってしまった東京。ここに日本旅館が必要だと今は誰も思っていないのですが、たった一つ残っていたとしても不思議ではありません。なぜ残ることができたのか。それは日本旅館が西洋ホテル以上に快適で機能的であるために進化し続けたからなのです。
「もう一つの日本」、これは私たちが星のや軽井沢を創った時に設定したテーマ。日本が捨てなくても良い日本らしさを捨てずに近代化していたら、どんな日本になっていただろう・・・という空想の世界。進化した日本旅館がしっかりと残っている東京、それは星野リゾートが2016年に提案する「もう一つの日本」なのです。