沖縄本島中部・読谷(よみたん)村。
海岸線に寄り添うように立つ「星のや沖縄」は、
刻々と移り変わる海の色を眺めながら、
季節を問わず暮らすように滞在できる新しいスタイルのリゾートです。
リゾートホテルが多い本島中部エリアは華やかなイメージだが、読谷村が見せる景色は異なっている。西海岸を通る国道58号線から村道の小道に入ると、住宅と畑が並ぶ静かなエリアに出る。遮るもののない青空の下、サトウキビや電照菊の畑が広がり、農作業をする人の姿が見え隠れする光景は、まるで沖縄の原風景のように思えて来る。サトウキビが風になびいて揺れ、ふっと潮の香りが鼻孔をくすぐり、海が近いことをうかがわせる。やがて見えてきた海の色は、空の青とは異なる鮮やかさ。緩やかな海岸線がずっと先まで見通せる。
海が近いことに期待を膨らませながら歩いていると、見上げるように高い壁が海岸線に沿ってうねるように立ちはだかる。沖縄に遺る琉球時代のグスク(城)の城壁を思わせる様相にハッとするが、門をくぐると畑が広がり、南国らしい草花や木の実が迎えてくれる。畑と畑の間には陽光をはね返すフクギの木が心地よい木陰を作っている。波音に混ざって時おり聞こえる人々の声。護られるような城壁に囲まれた集落には緩やかな時間が流れているようだ。
畑を通り抜けると客室が並び、その向こうには村道から見えた海が視界に広がった。期待に満ちて客室入り口の大きなガラス引き戸を開けると、ひときわ大きなテーブルに迎えられた。「土間ダイニング」と称されているダイニングを抜けてもう一つ大きな窓を開けると、そこはテラス。砂浜に佇んでいるかのように海が近い。潮の香りを運ぶ一陣の海風が部屋を通り抜けて行く。思わず振り返ると入り口の木々を揺らしていた。どこに居ても海とつながっていることに気づいた。
炭化させることで艶やかな黒を帯びた無垢材の大きなテーブルは、この「土間ダイニング」でひときわ存在感がある。買って来た地ビールを一口。喉の渇きがすっと引いて行く。到着時に頼んでおいた料理が届いたので、夕食にするにはまだ早い時間だが、手軽なクッキングコンロでさっと仕上げ、そろそろ食事を始めようか。
次第に夕暮れて来ると、ベッドルームにある青い紅型模様が橙色の紗をかけたような色合いに変わってきたことに気づく。グラスを手にテラスに出てソファに身を沈め、一日の終わりを輝かせる夕日と向かい合う。空と海の色は輝きを増しながら黄金色に染まり、やがて一瞬の煌めきを放ちながら水平線へと消えた。空を閉じるように夜が近づいて来るひととき。
リズミカルに寄せては返す波音は、子守歌のように眠りを誘い、やがて心地よい目覚めをもたらしてくれる。朝の光に導かれるように散歩に出てみる。「道場」の前を通りがかると何やら鍛錬の声と木床を踏み鳴らすような音が聞こえた。明日は参加してみようと思いながら通り過ぎる。海岸線に沿ってどこまでも長く続くような敷地には、区画ごとに様々な畑が広がっている。アセロラ、ヤシ、ブーゲンビリア、パパイア。歩き進むにつれ風景が変わるのが面白い。やがてプールが見えて来た。ほどよく汗をかいてきたので、そのまま飛び込んでしまおうかと思いがよぎる。気の向くままに一日が始まる。