環境設計を担当したのは、オンサイト計画設計事務所代表、長谷川浩己氏 。竹富島は、沖縄だけでなく全国的にも有数の伝統的集落や文化・芸能がリアルな生活の中に生きている島です。島という小宇宙の中にどのように新しい宿泊施設を埋めこむのか、どうしたら島の風景に溶けこみつつも新しい体験を提供できるかを考え、長谷川氏は膨大な試行錯誤を繰り替えしました。
中世には、この辺りにも石壁に囲まれた空間が次々に奥へと連なる、グスク(城)形式の集落があったそうです。また、現存する家々は、1棟ずつがグックで囲まれ、島の中心で井桁状の集落を構成しています。伝統を活かし、島全体が持続的に魅力を増していけるよう、長谷川氏はこれら二つのパターンの組み合わせを基本とした、ランドスケープデザインを目指しました。
グックに囲まれた庭や住戸にいたる島の伝統は、台風への備え、プライバシーと気候に合わせた暮らしの両立など、調べるほどにここでの暮らしにとても合理的にできています。星のや竹富島という新しい集落のランドスケープを考えたとき、竹富島の伝統に沿ってデザインすることは、島の風景としても、リゾートとしても、大きな価値をもらたすための大切なの要素だったのです。
6ヘクタールを超える星のや竹富島は、全体で一つの村。自分だけの庭から細い路地、その傍らの小さな畑、大きく空に開いたプール、森の木陰や見晴台、敷地すべてがゆったりとした滞在の場所であり、そのまま島全部へ自然につながっていきます。この新しい集落には、島の魅力を存分に味わう起点でありたいという思いを込められているのです。