設計を手がけたのは、建築家の東利恵氏。東氏がまず着目したのは、この島に暮らす人びとが日常のなかで育んできた生活や信仰です。石垣で囲まれた赤い瓦屋根の木造家屋、白い砂の敷きつめられた道、信仰の場である御嶽(うたぎ)、数多くの祭礼、継承されつづけている歌や踊りといった竹富島の文化は、施設を設計する上でとても大切な要素であると考えたのです。
東氏は、こうした竹富島の文化に対する尊敬の思いを込めて設計にとりかかりました。島内の集落同様、石垣に囲まれ、1棟ずつ独立した客室には、白砂の庭、魔除けであるヒンプンを配置、赤瓦の屋根にはシーサーをあしらいました。雨端柱(あまはじばしら)が建つ南側の縁側、心地のよい影を作りだす大屋根下の空間、北側の風よけのためのフクギも、島の伝統に沿ったものなのです。
客室は、風の間と名付けたくつろぎのための南の座敷、ゆったりとした水回り、そして壁に囲まれ守られている寝室で構成。南側の風の間から庭を望む木製のガラス戸と、北側のフクギが見えるガラス戸をすべて開放すれば、客室の中を竹富の風が通り抜けていきます。ゆっくりとした時間の流れのなかで、風を楽しみながらご滞在いただけるような建築設計となっています。