設計を手がけたのは、建築家の東利恵氏。風光明媚な嵐山という場所に奇跡的に残された100年前に旅館となった歴史ある日本建築のリノベーションという壮大な試みには、単に修復して蘇らせるだけでなく、建物と向き合い、京都にふさわしく、かつ、星のやらしさのある高級旅館として、新しい息吹きを吹き込みたいという思いで取り組みました。
京都には、現在の日常生活ではなかなか触れることのできない、京唐紙や格子、土塗壁、日本瓦といった職人の技が残っています。伝統を守る技術が生活の中に息づいている、数少ない場所です。一方で、京都という地域は古さや伝統だけでなく新しいものを積極的に取り入れ、生みだそうとする前衛的な性格を持っているとも言えるでしょう。
今回のプロジェクトは、日本の木造建築のもつ軽やかさと個室群からなる部屋の構成、歴史が作り出している味を活かすことを大切に考えています。また、星のやらしい非日常感やくつろぎ感を整えることにも注力しています。京都が持つ悠久の歴史と、星のや京都の取り組みは、これまでにない新しい空間をつくりだすことに成功しました。